この記事は、7月に開催されたHackFSで行われた、Juan Benet氏、Vitalik Buterin氏、Balaji Srinivasan氏による『分散型ソーシャルメディア』に関するパネルディスカッションについての内容です。ディスカッションの様子をご覧ください。
分散型ソーシャルメディアの考え方
人類の発展初期では、人は考えを述べる場所を探していました。古代ギリシャやローマなどの文明では、学識ある人々がそれぞれの考えについて議論し、結論や合意を得るための場を設けていました。
インターネットが普及した現代社会でも、このような場を「フォーラム」と呼んでいます。しかし、インターネットの進化に伴い、フォーラムも現在のソーシャルメディアの形に進化していきました。
つまり、2000年初頭のフォーラムのユーザーがテーマにコメントしていた状態を、Twitter、Facebook、Instagram、TikTokなどの現在のソーシャルメディアが置き換えたのです。
しかし、このような利用者の増加に伴い、企業の影が迫ってきています。インターネットはどのようにしてフォーラムを大企業のオリガルヒ(全部または大半の政治権力を、特定の少数の人々が握っている政体)から取り戻すのでしょうか?その答えは、分散化されたソーシャルメディアにあります。
自由な議論の場の必要性について
ギリシャやローマのような古い社会が古典的な知識を継承できたのは、議論によって知識が蓄積されたからです。哲学者たちがフォーラムで議論し、その情報が社会全体に伝わっていったのです。議論の自由がなければ、アイデアの検閲によって、人々が現実を認識する能力に大きな問題が生じる可能性があります。
分散型ソーシャルメディアの必要性は、人々が協力し合うことでより良い結果が得られるという考えに基づいています。現在のメディアは、人々を対立させることを好みます。対立はクリック数を増やし、クリック数は収入を増やします。
現代メディアの基盤を取り除く
現代のメディアの多くは、目的を達成するための手段として存在しています。ソーシャルメディアはその典型的な例です。TikTokやYouTubeのような企業では、コンテンツ制作者が自分の作品を作り、サイトにアップロードすることができます。
その “良い “コンテンツと共に、広告やアルゴリズムが購入希望者を選び、発信されます。このシステムでは、インフルエンサーは、コンテンツに100%の責任を負っているにもかかわらず、企業が回収する広告収入のごくわずかしか収入を得る事が出来ません。
今のWeb2.0からの教訓として、Web3.0を構築しているコミュニティは、主にインフルエンサーに焦点を当てるべきです。その理由は2つあります。
1つ目は、インフルエンサーは多くのフォロアーに見られているため、プラットフォームを切り替えると、インフルエンサーをフォローしている人が大量に流出してしまう可能性があります。2つ目の理由は、インフルエンサーも人間なので、彼らに分散型ソーシャルメディアの導入の推進をするべきです。ソーシャルメディアを利用している有名人のほとんどは、実際にプラットフォームに投稿しているわけではなく、雇われたメディアマネージャーや、ツイートや投稿を管理する会社があります。
小規模なインフルエンサーは通常、自分のアカウントを管理する人を雇う資金がなく、自分でやっている事が多く、こうしたソーシャルメディアのプラットフォームに何を期待できるかという議論に引き込まれます。しかし、インフルエンサー自身はフォーラムに興味があっても、管理をする企業やメディアは、そこには興味がないはずです。
報酬基準の変化について
では、このようなソーシャルメディアのシステムでは、人々はどのように報酬を受けとれるのでしょうか?
ソーシャルメディアにポジティブな影響を与えるためには、いろいろな行動で報酬を受けられる必要性があります。これを実現する方法のひとつが、遡及的なパブリックファンディングの提供です。このファンディングモデルでは、過去にさかのぼり、インパクト評価が作成されます。
インパクト評価とは、特定の個人がネットワークへの特定の追加や変更に責任があることを示すものです。例えば、ある個人が、特に人気のあるミームのテンプレートフォーマットを作成したとします。このミームのテンプレートが広く利用されていることから、作成者には報酬が与えられます。ネットワークへの貢献が認められ、賞品が用意されるということです。
これらの賞品は、自分のメリットの為ではなく、ウェブの形成に貢献する人に与えられる為、事前に用意されていません。この報酬システムは、現在のソーシャルメディアで使われているものとは相反するものですが、それには理由があります。
現在のソーシャルメディアは、分断と二極化を利用しています。この新しく改良されたモデルは、プラットフォームやユーザーを助けた個人に報酬を与えるものです。これは、ネットワーク全体の発展と普及への貢献度に基づいた、正確な価値を基準とした分配です。
真実の価値を変える
ブロックチェーンはユニークです。物理的な問題を抽象的な概念に関連づけます。つまり、解かなければならない数式は、使用可能なトークンに変換されます。この「真実の価値」というシステムは、コンセンサスに基づいています。
ブロックチェーンネットワークでは、チェーンが同意しない限り、何かを真実とみなすことはできません。「真実」はブロックチェーン上のコンセンサスと結びついているため、一方的な変更はできません。ソーシャルメディアに話を戻すと、この2年間で、複数の真実が並存していても、そのどれもが現実を反映していないことが明らかになっています。
分散型ソーシャルメディアのプラットフォームは、真実をコンセンサスに結びつけることを目的としています。このシステムの最良の実装は、ソーシャルメディアを、真実を否定できないものに結びつけることです。このコンセプトを実現するのは難しく、物事が変われば、それに合わせて真実も変化していかなければなりません。しかし、目に見える形で真実とリンクすることで、ソーシャルメディア社会における真実の価値を明確にすることができます。
ソーシャルメディアの連鎖における真実の価値は、コミュニティが真実をどう解釈するかにかかっています。しかし、これにはもう一つの問題があります。それは、同質なグループの問題です。
グループと断片化について
ソーシャルメディアでは通常、様々なグループをサポートしています。これは、友人や連絡先を記録しておくのに便利な機能だからです。Redditのように、グループがソーシャルメディアサイト全体の基盤になっていることもあります。
Web3.0のような暗号ファーストのソーシャルメディアシステムでは、グループは暗号で管理され、目標に向かって調整されます。現在のソーシャルメディアにありがちな、イデオロギーに基づいたアイデアではなく、人々がさまざまな物事を理解する方法を目的としたグループができます。
当然、二極化は起こりますが、その二極化は、現在のように政治的イデオロギーだけでなく、もっと具体的なものに基づいているかもしれません。この二極化を克服する方法は、専門的な知識です。
特定のグループの間で、何が真実であるかというコンセンサスが得られ、他のグループは彼らが専門家である事を認識し、従うことになります。誰かが金銭的な利益のために何かをしたり、言ったりしていないかなど、気にしなくてもよくなります。
このような仕組みは断片化を招きますが、断片化は必ずしも悪いことばかりではありません。特定の目的を持ったグループの一部(断片)が、世間の常識に反発した結果、一理あると認められるかもしれません。世の中の基本である「ネット戦争」が、より長文のディベートに近いものに変わっていくでしょう。
断片化が良いものであるためには、断片自体が価値を生み出すものでなければなりません。グループの中で、断片はこれらの目標を達成するための代替アプローチを検討するかもしれません。断片は、現在のソーシャルメディアが成し遂げようとしていることとは正反対の、思考の多様性をさらに高めることにつながるかもしれません。
今後の展望
分散型ソーシャルメディアの実現は、まだ先のことでしょうか?
社会が真の分散型ソーシャルメディアに似たものを目にするのはまだ先のことかもしれませんが、新しいフレームワークがどれだけ使われるかで、専門家ではない人々の間でより多く採用されるかもしれません。
本ブログは、www.filecoin.io/blog からの翻訳となります。
ソース: https://filecoin.io/blog/posts/the-future-of-decentralized-social-media/
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