ストレージプロバイダーエコシステムの詳細

Filecoin

2022年3月2日、Enterprise Storage Provider Accelerator(ESPA)が主催するFilecoin Storage Provider Bootcampのライブバーチャルキックオフイベントに参加しましょう。このイベントには、Filecoinネットワーク上でビジネスを構築する方法や、Filecoinストレージプロバイダー候補のためのリソース、ガイド、ウォークスルーなどの情報が集められます。さらに学びたい場合は、6ヶ月間のESPAアクセラレーターに申し込むことも可能です。登録はこちら

独占的なサービスから分散型サービスへの移行は、すでに多くの産業に影響を与えており、レンタルストレージサービスも例外ではありません。P2Pのアーキテクチャは、集中型サーバーに基づくWeb2.0のビジネスモデルを、インセンティブを持つWeb3.0上のオープンサービスに変えることができます。

FilecoinネットワークはIPFSプロトコルの上に構築され、現在のクラウドストレージソリューションに代わるオープンかつ実行可能なソリューションとして機能しています。これは、価格操作やベンダーのロックイン、取引相手の信用リスクなど、現在の欠陥を解決し、サービスプロバイダーとして市場に参入しようとする人の障壁を低くするべく、設計されています。

これを実現するために、ネットワークは、その運営を支える複数の独立したアクターの役割調整に課題を抱えています。クライアント、開発者、トークン所有者、エコシステムパートナー、ストレージプロバイダーはすべて、Filecoinのアイランドエコノミーの一部なのです。

ストレージプロバイダーの役割

特にストレージプロバイダー(SP)は、Filecoinネットワークにとって非常に重要な存在です。SPは、余分なストレージスペースを他の人に貸しだすことでコミュニティに貢献する人たちのことです。

Filecoinでは、SPは他のブロックチェーンにおける「マイナー」と同様の役割を担っています。誰でもSPとして、ネットワークの主要なリソースとなるストレージ容量を提供し、ネットワークに参加することができます。

SPは、利用可能なストレージ容量が10PiBを超えると、データの保存(ストレージ)と取り出し(リトリーブ)の取引(ディール)を追跡し、ブロックチェーンを繋ぐことが可能になります。Proof of Workブロックチェーンのメカニズムと同様に、ブロックリワードを得ることができます。(ただし、FilecoinのコンセンサスはProof of Useful Workの実装によって得られており、これについては後述する)。

SP事業にとって同様に重要なのは、これらの保存、取り出し、取引に参加する能力です。これは、SPが報酬と引き換えに、ネットワークに取り込んだストレージスペースを提供することで、クライアントとやり取りを行うものと定義することができます。

全体として、SPはFilecoinの分散型ストレージ市場の基礎を形成しており、その運用はネットワークの堅牢性の指標として捉えることができます。彼らのエコシステムを理解することは、ネットワークの価値とロードマップ、そして分散型ストレージの未来を理解する上で非常に重要です。

ストレージプロバイダーの統計

メインネットの立ち上げ以来、Filecoinネットワークは、ユーザーが利用できるストレージパワーの点で着実に成長を続けています。SPの数は3,876社に達し、最大で1つのSPが147.65PiBのストレージスペースを提供しており、合計では15.6EiBを超えるストレージが提供されました。

過去1年間のFilecoinのストレージパワー(出典:https://filscan.io/statistics/power

それに伴い、ネットワーク上に保存される情報量も増加し、現在では1,623,282件の有効な取引で36.95PiBものストレージが使用されています。特にFilecoin+の取引は16.1PiBと、全体のほぼ半分を占めています。(Filecoin+はコミュニティが運営するプログラムで、承認済みクライアントとの取引をすることでSPに割り当てられる数が10倍になる)。

2021年7月以降のFilecoinネットワークにおけるストレージ取引の伸び(出典:Protocol Labs)

これは、規模も地理的位置も異なるストレージプロバイダーが参加する、グローバルコなミュニティのおかげです。

Filecoin SPが世界中のどこに集中しているかを見てみましょう。(出典:Protocol Labs)。

様々な規模のストレージプロバイダー

実は、SPエコシステムの参加者が多様であるということは、ネットワークの設計に多くの配慮がなされた結果と言えます。Filecoinは誰でもアクセスできるネットワークであり、エンタープライズグレードのストレージプロビジョニングを繁栄させる一方で、小規模な個々のセットアップにも成長の機会を与えています。

これは、単純なハッシュレートよりもネットワーク上の有用なリソースの使用に報酬を与えること、ストレージ証明コンセンサスアルゴリズムを使用していることが要因です。このアルゴリズムは、Filecoinと従来のProof of Workネットワークとの大きな違いです。Proof of Workネットワークでは、過度な計算力を使用し、マイニングを行っています。

この問題に対するFilecoinの解決策は、Proof of ReplicationProof of Spacetimeと呼ばれる暗号メカニズムの組み合わせです。これらのメカニズムにより、SPはクライアントに対して、自分のデータがネットワーク上に永続的に保存されていることを証明することができます。さらに、ネットワークにコミットしたストレージパワーの量に比例して、ブロックリワードの対象になることを保証することが、エコシステムの多様性に関与していると考えられます。

これにより、大小のストレージプロバイダーが共存し、異なるユーザーのストレージニーズを満たすことができる健全なエコシステムが育まれます。つまり確かに有利ではありますが、大規模なストレージを集める能力が、必ずしもネットワークの成功につながるとは限らないのです。

小規模・個人向けストレージプロバイダー

FilecoinのSPになるためのハードウェア条件は、通常のコンシューマーエンドのセットアップでは満たされることはありあません。しかし、小規模または個人のSPになることは可能です。Filecoinのドキュメントには、参加者を導くのに役立つが掲載されています。また、ストレージプロバイダーのBenjamin Hoesjbo氏は、個々のセットアップのための説明を、2本の動画にまとめています。

同様に、Filecoinはネットワークに参加するためのさまざまなアプローチに対応しており、中には他のものより少ないリソースしか必要としないものもあります。個人や小規模のストレージプロバイダーは、ネットワークで価値を高めるために、コンセンサスプロセスへの参加に必要な10TiBのコミットメント容量に達する必要はありません。

それでも、保存や取り出しの取引で報酬を受け取り、それに応じて事業を拡大することができます。BigChungusは最近、この戦略でコンセンサスノードになることに成功したストレージプロバイダーです。

Filecoinコミュニティは、個々のストレージプロバイダーが大規模な同業者と共に繁栄することを可能にする他のツールやプログラムも開発しました。

SnapDealsはネットワークの新しい拡張機能で、クライアントデータを迅速に搭載するための方法を導入しています。これにより、ストレージを提供するための初期計算オーバーヘッドが平均6時間から1時間に短縮され、小規模なSPセットアップがより競争力を持つようになります。

前述のFilecoin+プログラムは、小規模なSPが承認されたクライアントとの取引が利益をもたらす仕組みです。これらのクライアントとの取引に成功すると、ストレージパワーの測定値が10倍になります(その結果、ブロックリワードのコンセンサスプロセスに参加するチャンスも増えます)。

Snap DealsとFilecoin+の両方を組み合わせることで、小規模および個人のSPは、今までより多くの恩恵を受けることができます。

Filecoin MinerX Fellowshipプログラムは、世界中の小規模なSP事業をサポートするという特定の目標を持ったもう一つの取り組みです。

Snap Dealsの導入とFilecoinマーケットプレースにおけるFilecoin+ディールの増加は、ネットワーク内のあらゆる規模のSPが利用できるので、機会の平等性を保っています。一方、MinerX Fellowshipは、SPコミュニティをサポートするプロジェクトを選択することで、エコシステムの発展を継続的に促進します。

大規模およびエンタープライズストレージプロバイダー

Filecoin ストレージプロバイダーのエコシステムにとって重要なことは、大容量データのニーズに応えるアクターたちです。彼らは、USC Shoah Foundation、Wikipedia、Internet Archiveなど、貴重な情報を永続的に保存する役割を担っています。

過去には、これらの大規模なデータセットは、保存のためにクラウドサービスのような集中型ストレージプロバイダーだけに頼っていましたが、Filecoinのシステムと、SPのコミュニティのおかげで、より費用対効果の高い代替手段を提供することができました。

現在、エコシステム内には、こうしたクライアントのニーズに応えることのできる、さまざまな規模のSPが存在します。

PiBで提供されるストレージパワーの量から見たSPエコシステム(出典:Protocol Labs)

また、これらのクライアントにFilecoinネットワークを紹介したコミュニティメンバーに報酬を与える紹介プログラム「Project Gravity」の開始により、大規模データセットに対応できるStorage Powerの需要が高まることが予想されています。

ストレージプロバイダー支援のエコシステム

SPエコシステムは大規模で分散しています。そして、参加者をサポートする堅牢なツール、アプリ、フレームワークから利益を得ています。Filecoinのオープンソースアプローチのおかげで、このサポートエコシステムはSPと開発者が共に成長することができます。

Lotus:Protocol Labsが開発したこのツールは、Filecoinストレージプロバイダーの主要なリファレンスノード実装として機能しており、自由に使うことができるツールです。

FilRep:SPの過去のパフォーマンスや、平均取引価格、コミットされた容量、再生可能エネルギーの購入など、その他の重要な資格を誰でも検証できる透明性の高いツールです。

Filecoin Green:Filecoinは、Proof of Useful Workに基づくコンセンサスにより、Proof of Workブロックチェーンよりも環境に配慮した運用がすでに可能になっています。また、クリーンなSP運用を促進し、ネットワークをカーボンニュートラル、できればカーボンマイナスの領域へと導くために、FilRepシステムなど他の機能も活用しています。

オープンソースのダッシュボード「Filecoin Green」は、個々のSPのエネルギー消費量を固有の識別子にマッピングするとともに、ネットワーク全体のデータを集約することで、エネルギーの透明性の保証をしたいと考えています。

Filecoin Greenのダッシュボードでは、毎月の総エネルギー使用量(YTD)が表示されます(出典:https://filecoin.energy)。

PiKNiK:ストレージの提供プロセスを簡素化し、セットアップに通常必要とされる技術的な知識がなくてもSPが利用できるようにするサービスです。PiKNiKは最近、エンタープライズ向けのストレージプロバイダーがネットワークに参加できるようにするためのESPA(Enterprise Storage Provider Accelerator)プログラムを開始しました。

仲間に出会い、リソースを集め、コミュニティリーダーやトレーニングモジュールから学ぶバーチャルブートキャンプトレーニングに参加したい方は、2022年3月2日に開催されるESPAのオンラインイベントに登録してください。

CIDGravity:この軽量で安全なツールは、Filecoinコミュニティによって開発されました。迅速な導入と分かり易いインターフェースで、SPに価格設定と顧客管理のソリューションを提供します。

Bitbot:ストレージ取引オークションでの入札を代行するSP向けサイドカーアプリケーションです。

Filecoin Benchmarks:Filecoinネットワークにおけるハードウェアのパフォーマンスを比較できるウェブツールです。新規参加者が自分のセットアップに何が必要なのかを把握するための理想的なリファレンスです。

Hactar:SPは、セットアップを把握し、パフォーマンスを最適化するための分析ツールを必要としています。このウェブアプリは、SPノードへのリモートアクセスやオフラインでの監が可能です。

Fgas:ガス料金の問い合わせをSPにリアルタイムで表示するツールです。

Filecoinブロックエクスプローラ、データアグリゲータ、および分析ツール:FilscanFileappGrafanaFilecoin Network Health Dashboardなどのサイトは、Filecoinネットワークとその状態の可視化や、データポイント、情報源などを提供しています。これらのサイトには、SPやディールに特化したセクションも存在します。

より多くのストレージプロバイダーを迎える

Filecoinメインネットの立ち上げから、これだけの短期間の中でのストレージプロバイダーのエコシステムの進化は、分散型ストレージにとって大きなマイルストーンです。ネットワークが世界的に広がり、全体的な容量が増えるにつれて、SPはその発展において重要な役割を果たし続けるでしょう。世界のあらゆる参加者は、インターネットの継続的な分散化の推進を支援するため、Filecoinのサポートとコミュニティを見つけることができます。

リソース

エコシステムに参加しましょう。コアドキュメントを開き、Filecoinネットワークのストレージプロバイダーになるための最初の一歩を踏み出しましょう。また、小規模か大規模か、南アジアか北欧で始めるかどうかにかかわらず、あなたを導くためのリソースを提供しています。

Filecoinストレージプロバイダーについてもっと知るには?

Filecoinホワイトペーパー

Filecoinの技術仕様に関するSPセクション

ストレージプロバイダーに関するFilecoinのドキュメント

Lotusドキュメント

Magik6kによるFilecoin SPワークショップ

Filecoinストレージプロバイダーに特化したプレイリスト

プロトスクールの「Filecoinでストレージを検証する」コース

Filecoinの経済に関する論文

各種ガイダンス

Filecoinストレージマイニングの手引き

Filecoinアイランドエコノミー

Filecoinの暗号経済構造                      

コミュニティを覗いてみましょう。

Website

Github

Slack

Twitters


本ブログは、www.filecoin.io/blog からの翻訳となります。
ソース:https://filecoin.io/blog/posts/a-deep-dive-into-the-storage-provider-ecosystem/

IJC-media

IJC-media

IPFSを中心とした技術による日本の産業競争力の向上を目指すIPFS JAPAN コンソーシアムが、最新の世界動向や業界情報を配信するメディアサイト

関連記事

コメント

この記事へのコメントはありません。

TOP